上から降りてくる美術館
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク、1959年開館)は、フランク・ロイド・ライトの最後の大作です。
通常の美術館は、部屋から部屋へ歩いて回ります。この建物では、来館者はまずエレベーターで最上部へ運ばれ、連続するらせんのスロープを、ゆっくり降りながら作品を見ます。展示室という区切りがなく、鑑賞は途切れません。床は常にわずかに傾いており、水平な場所がほとんどない。建物の形そのものが、鑑賞の順路になっている建築です。
外から見た形は、内部の断面そのもの
外観は、上に向かって広がる逆円錐の塊です。この形は装飾ではなく、内部のスロープがそのまま外に現れたものです。上階ほどスロープの半径が大きくなるため、建物も上へ行くほど太くなります。
断面図を見ると、この関係が一目でわかります。中央は最上部のトップライトまで吹き抜けており、自然光が底まで落ちてきます。平面図だけを見ても、この建築は理解できません。断面で初めて、なぜこの形なのかが説明できます。
同じ1959年、上野でも渦が完成していた
ここに奇妙な一致があります。
コルビュジエは1930年代から「無限成長美術館」——収蔵品が増えれば渦巻き状に外側へ増築していける美術館——を構想していました。そして1959年3月、東京・上野に国立西洋美術館が竣工します。中央の吹き抜けから展示室が四角い渦を描いて巡る、その構想の実現でした。
グッゲンハイムの開館は同年10月。互いを認めなかった二人が、同じ年に、渦を巻く美術館を完成させていたことになります。
ただし渦の向きは違いました。ライトはらせんを降りる体験を設計し、コルビュジエは渦が外へ伸びていく可能性を設計しました。片方は鑑賞の順路、もう片方は建物の成長です。
学芸員からは批判された
この建物は、開館当初から美術関係者の評価が分かれました。壁が傾いているため絵を掛けにくく、スロープの床も傾いているため作品と正対しにくい。建築が主張しすぎて、展示の邪魔になるという批判です。
同じ問題は国立西洋美術館にもあります。無限成長美術館は増築を前提とした構想でしたが、実際には一度も渦は伸びていません。理念として美しい構想が、運用では制約になる——美術館建築が繰り返し直面してきた論点です。
二つの渦を、図面で比べる
ライトの渦は連続するらせん、コルビュジエの渦は四角い回廊です。写真で見比べても、この違いは伝わりにくい。
平面図を重ねると、片方は一本の線が回り続け、もう片方は直角に折れながら外へ向かうことが見えてきます。同じ「渦」という発想から、これだけ違う建築が生まれた。国立西洋美術館の側の図面は、下記のポートフォリオに収録されています。
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