かまぼこ屋根が、並んでいる
サラバイ邸(1955年/インド・アーメダバード)は、コルビュジエが繊維業で財を成したサラバイ家のために設計した住宅です。
屋根は連続するヴォールト(かまぼこ型)で構成されています。ドミノ・システム以来の平らなスラブではありません。
そしてそのヴォールトの上に土が盛られ、草が植えられています。屋上庭園ですが、装飾ではなく断熱のためです。土の層が、インドの強烈な日射から室内を守ります。
風が、抜けるように作られている
この住宅には、はっきりしたガラスの壁がありません。
両端が大きく開き、風が建物を貫通します。ヴォールトの断面は、熱い空気が上に抜けるのを助けます。空調ではなく、形と素材で暑さに対処する。
コルビュジエがヨーロッパで追求した白い箱とガラスとは正反対の解です。ガラスは熱を溜め込む。インドでは成立しない。
気候が違えば、正しい形も違う。後期コルビュジエは、この当たり前を実作で示しました。
ブリーズ・ソレイユという発明
同じ時期のインドの作品群には、ブリーズ・ソレイユ——コンクリートの日除け格子——が多用されています。
これはコルビュジエが1930年代から発展させてきた要素です。ガラス面の外側に深い格子を置き、直射日光を遮りながら風は通す。
アーメダバードの繊維業会館やチャンディガールの行政庁舎では、この格子が建物の外観を決定づけるほど大きく展開されました。
近代建築を熱帯で成立させるための、実務的な発明だったといえます。
弟子たちがここで学んだ
アーメダバードとチャンディガールの現場では、若い建築家たちが実務を担いました。
そのひとりがバルクリシュナ・ドーシです。1951年からパリのアトリエで働き、その後インドに戻ってコルビュジエ作品の現地監理を務めました。2018年にプリツカー賞を受賞しています。
インドの近代建築は、この現場から始まりました。
平面図と断面図で見る
サラバイ邸は、写真では「草の生えた屋根の家」に見えます。
断面図を開くと、ヴォールトの曲率、土の厚み、開口部の高さが読めます。平面図では、風が通る方向と部屋の配置の関係がわかる。
「涼しい家」が、具体的にどの寸法でできているか——図面でしか確認できません。
同じ時期のインド作品を図面で確かめたい方は、下記の手描き構想図をご覧ください。
📖 あわせて読みたい
ル・コルビュジエが人生の最晩年に辿り着いた、わずか8畳の極小世界遺産「キャバノン」と愛妻イヴォンヌとの深い愛の物語を紹介しています。


