マイレア邸とは|アアルトが白い箱に持ち込んだ森

サヴォア邸に、フィンランドの森を通したら

白い箱から始まっている

マイレア邸(1938–39年/フィンランド・ノールマルック)は、アルヴァ・アアルトが実業家ハリー・グリクセンとマイレ・グリクセン夫妻のために設計した住宅です。

外観の骨格は、当時の近代建築の語彙で組まれています。白い壁、水平の窓、平らな屋根。ここまではサヴォア邸(1928–31年)と同じ出発点です。

ところが近づくと、様子が変わります。玄関の庇は不定形な曲線を描き、支えているのは細い木の柱を数本ずつ束ねたもの。壁の一部は木板張り、屋根には芝が載っています。

マイレア邸の束ねられた木の柱と不定形な庇

森を、建築の中に持ち込む

束ねられた細い木の柱は、周囲の松林を思わせます。しかも配置は不規則で、等間隔のグリッドではありません。

コルビュジエの柱は、規則的なグリッド上に置かれます。それによって平面が自由になるという理屈でした。アアルトはその規則性をあえて崩し、歩くにつれて視界が変化する効果を優先しています。

また、居間と食堂の境界は壁ではなく、家具や床材の変化、天井高の違いで示されます。幾何学で仕切るのではなく、感覚で領域を分けるやり方です。

コルビュジエへの応答として読まれてきた

マイレア邸はしばしばサヴォア邸への応答として論じられます。

白い箱・水平窓・自由な平面という近代建築の道具立てを受け入れながら、そこに地域の素材と不規則さを持ち込んだ。「普遍的な近代」と「その土地の条件」をどう両立させるか——この問いに対する初期の解答のひとつです。

ただし、アアルトがサヴォア邸を直接の批判対象にしたと断定できる一次資料は限られます。後年の建築史がこの二つを対比させて論じてきた、というのが正確な言い方です。

アアルトはCIAM(近代建築国際会議)のメンバーで、コルビュジエとは同じ運動の内側にいました。

平面図を見ると違いがはっきりする

この住宅の特徴は、写真では「木を使った近代建築」としか見えません。

平面図を開くと、柱の位置が不規則であることが明確になります。サヴォア邸の平面図では柱が整然と並ぶのに対し、マイレア邸では列がずれ、束になり、時に消える。

また、L字型に折れた平面がサウナと中庭を囲い込む構成も、平面図でこそ読めます。「有機的」という言葉で語られがちなアアルト建築が、実際にはきわめて意図的な配置の操作だったことがわかります。

アアルトという位置

アルヴァ・アアルト(1898–1976)は、パイミオのサナトリウム(1933年)、フィンランディア・ホール(1971年)などを手がけました。家具デザインでも知られ、成形合板による椅子は現在も生産されています。

近代建築の合理主義を受け入れつつ、素材の温かみと不規則さを持ち込んだ立場は、コルビュジエの直角とアアルトの曲線という対比でしばしば語られます。

コルビュジエの側の住宅を図面で確かめたい方は、下記の手描き構想図をご覧ください。

図面を手元に置く

美術館公式グッズ

復刻された手描き構想図の額絵用アートポスターです。住宅・集合住宅・宗教建築の3点を並べて飾ると、コルビュジエが手がけた領域の広さが一望できます。

サヴォア邸の図面

サヴォア邸の図面

近代建築の五原則を体現した住宅の手描き構想図/約30×24cm

1,650円 送料無料

ユニテ・ダビタシオンの図面

ユニテ・ダビタシオンの図面

垂直の庭園都市を実現した集合住宅の手描き構想図/約30×24cm

1,650円 送料無料

ロンシャンの礼拝堂の図面

ロンシャンの礼拝堂の図面

曲線と光が生んだ宗教建築の手描き構想図/約30×24cm

1,650円 送料無料

💡 関連する名言

ル・コルビュジエが残した、現代の生き方や美意識にも響く10の名言を解説しています。

ル・コルビュジエの名言10選とその真意を読み解く

📖 あわせて読みたい

ル・コルビュジエが人生の最晩年に辿り着いた、わずか8畳の極小世界遺産「キャバノン」と愛妻イヴォンヌとの深い愛の物語を紹介しています。

「8畳の愛」コルビジェが妻に贈った世界遺産キャバノン