ほとんどが、地下にある
ロサンゼルス現代美術館(MOCA、1986年/アメリカ・カリフォルニア州)は、磯崎新が設計した美術館です。
敷地は再開発地区の一角で、上部に高層ビルを建てる権利が設定されていました。そのため美術館は地上に大きく建てられません。
磯崎の解答は、展示室の大部分を地下に置くことでした。地上に現れるのは、赤い砂岩に覆われた低い塊と、ピラミッド型の天窓群、そして円筒形のヴォールト屋根だけです。
幾何学の基本形が並ぶ
地上部分を見ると、立方体、ピラミッド、円筒、アーチといった基本的な幾何学形態が並んでいることに気づきます。
これは偶然ではありません。磯崎はこの建築で、幾何学の基本形を組み合わせるという古典的な手法を意図的に用いています。
コルビュジエも『建築をめざして』で、「立方体、円錐、球、円筒、ピラミッドは、光がそれを明らかにする偉大な第一次形態である」という趣旨のことを書いていました。基本形態への信頼は、両者に共通しています。
黄金比を使った
磯崎はこの建築の各部の寸法決定に黄金比を用いたと述べています。
コルビュジエがモデュロールで行ったことと同じ発想です。人体寸法と黄金比から数列を導き、それを建築のあらゆる寸法に適用する。
ただし目的が違います。コルビュジエのモデュロールは、工業生産の規格化と人間の身体を両立させるための実用的な道具でした。磯崎の黄金比は、むしろ形式の秩序を担保するための操作です。
同じ数学を、片方は生産のために、もう片方は形式のために使っています。
つくばセンタービルとの関係
MOCAの3年前、磯崎はつくばセンタービル(1983年)を完成させています。
つくばでは、カンピドリオ広場を引用しながら中心を沈ませ、空白にしました。MOCAでは、美術館そのものを地面より下に沈めています。
「中心を空ける」「地面より下へ行く」という操作が、連続して現れているのは偶然ではないでしょう。近代建築が信じた上昇と中心性への、一貫した疑いがあります。
断面図で見る
MOCAは、外から見ても建物の大きさがわかりません。大部分が見えないからです。
断面図を開くと、街路レベルから展示室がどれだけ下がっているか、天窓からの光がどう届くかが読めます。地上の小さな塊と、地下の大きな空間の関係が現れる。
「見えない建築」を理解するには、断面図しかありません。コルビュジエ側の美術館の断面を確かめたい方は、下記のポートフォリオをご覧ください。
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