プラネクス邸|コルビュジエがパリの街路に建てた住宅

プラネクス邸の外観

ル・コルビュジエの1920年代の住宅というと、郊外の白い箱を思い浮かべる方が多いはずです。プラネクス邸はそのイメージから外れます。パリ13区の大通りに面し、両隣に建物が迫る都市住宅。1928年の完成です。

パリの大通りに面した一軒

敷地はマセナ大通りに面した細長い区画です。前面は交通量の多い道路、背面には鉄道が走っていました。環境としては、決して恵まれた条件ではありません。

サヴォア邸のように、四方の景色へ開くことはできない。コルビュジエはこの敷地で、開くべき方向と閉じるべき方向を選り分ける設計をしています。

施主は墓碑の彫刻家だった

施主のアントナン・プラネクスは、墓碑彫刻を手がける職人でした。要求は明快です。制作のためのアトリエと、住居と、収入を得るための賃貸部分。

ギエット邸の施主が画家だったように、コルビュジエの初期の住宅作品には制作者のための建物が多いという特徴があります。制作空間には安定した光と天井高が必要で、その要求が設計に明確な条件を与えました。ギエット邸 とあわせてご覧ください。

左右対称という珍しい選択

プラネクス邸の正面は、ほぼ左右対称に構成されています。これはコルビュジエの作品としては珍しいことです。

左右対称の立面構成を示した解説ダイアグラム

彼は「自由なファサード」を五原則の一つに掲げた人です。構造から解放された外壁は、対称である必要がありません。実際サヴォア邸やクック邸の立面は、対称性から意図的に外されています。

それでもここで対称を選んだのは、街路に対する建物の立ち方を考えたからだと読めます。通りに面した建物は、街並みの一部として振る舞う必要がある。郊外の独立住宅とは前提が違います。

住宅に賃貸部分を組み込む

プラネクス邸には、施主一家の住居とアトリエのほかに、貸室が組み込まれています。住宅の一部を賃貸に回して建設費を回収するという、きわめて現実的な計画です。

コルビュジエの住宅は理念先行と見られがちですが、実際には施主の経済条件に応えた設計が少なくありません。建物の断面が、家計の構造を反映していると言うこともできます。

1920年代パリの住宅群のなかで

1920年代のコルビュジエは、パリとその近郊で住宅を集中的に手がけました。ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(1925年)、クック邸(1926年)、プラネクス邸(1928年)、そして郊外のサヴォア邸(1931年)。

この一連の仕事のなかで、プラネクス邸はもっとも都市的な条件に置かれた例です。敷地に余裕がなく、隣家が迫り、街路の秩序に応える必要がある。理論をそのまま適用できない場所で、何を残し何を諦めたかが読み取れます。

都市のなかの近代建築という課題

コルビュジエは同じ時期に、パリ中心部を高層建築に建て替える「ヴォアザン計画」を発表していました。既存の街区を一掃し、公園のなかに塔を建てるという構想です。

一方で彼は、その既存の街路に面した住宅をきちんと設計してもいます。都市を否定する計画と、都市に応じる実作が並行していた。この二重性は、コルビュジエを読むうえで重要な手がかりになります。

同時期の住宅は クック邸、都市構想については ヴォアザン計画 をご覧ください。

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