湖のほとりに立つ白い塊
フィンランディア・ホール(1971年/フィンランド・ヘルシンキ)は、アルヴァ・アアルトが設計したコンサートホール・会議施設です。
トーロ湾に面して建ち、外装はイタリア産カッラーラの白大理石。低く水平に伸びる本体から、ホール部分が斜めに切り上がる塔状の形で立ち上がります。
アアルトはヘルシンキ中心部の大規模な都市計画も構想していましたが、実現したのはこの建物を含むごく一部でした。
その石が、反った
この建築には、よく知られた問題があります。大理石の板が反ってしまったのです。
薄く切った大理石は、寒暖差の大きい気候では表と裏で膨張率が変わり、時間とともに湾曲します。フィンランドの冬と夏の温度差は、地中海性気候の産地とはまったく違いました。
1990年代と2010年代に大規模な張り替えが行われましたが、同じ素材を使う限り同じ問題が起きるため、根本的な解決には至っていません。
なぜ白大理石だったのか
アアルトがこの素材を選んだ理由は、機能ではなく意味にありました。
白大理石は地中海の建築、とりわけ古典建築の素材です。北の国に南の石を持ち込むことで、ヘルシンキという都市に文化的な位置づけを与えようとした——そう論じられてきました。
ここでアアルトは、「その土地の素材を使う」という自身の原則から離れています。マイレア邸で木を使い、パイミオで気候から形を決めた建築家が、最後の大作で象徴を優先した。
コルビュジエの打放しと比べる
コルビュジエが晩年に選んだのは打放しコンクリート(ベトン・ブリュット)でした。
型枠の木目がそのまま残り、汚れ、風化する。美しく仕上げるのではなく、素材の状態をそのまま見せるという判断です。ロンシャン、ラ・トゥーレット、ユニテ、すべてこの選択でした。
結果として、コルビュジエの建築は汚れても「そういうもの」として受け止められます。白大理石は汚れも反りも「劣化」に見える。
素材選択は、時間の経過をどう扱うかという判断でもあります。
維持という問題
この事例が示すのは、名作建築が抱える維持の問題です。
ユニテ・ダビタシオンもコンクリートの補修を繰り返しています。落水荘は片持ち部分の構造補強が必要でした。実験的な建築ほど、時間との闘いが厳しくなります。
そして修復の拠り所になるのは、いつも残された図面です。
コルビュジエの側の素材と構造を図面で確かめたい方は、下記の手描き構想図をご覧ください。
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