CCTV本社ビルは、中国中央電視台の本部として北京に建てられた超高層ビルです。設計はレム・コールハース率いるOMA。2000年代に建設され、2012年に完成しました。2本の傾いた塔を空中で直角に連結した「輪」のかたちは、完成前から世界の議論を呼び、いまも賛否が割れ続けています。
高さを競わないという選択
2000年代の北京は、オリンピックを控えた建設の熱に沸いていました。超高層の国際コンペでは、より高く、より目立つ塔が競われるのが常です。
OMAの提案は、その競争自体を降りるものでした。高さで勝負せず、かたちの論理で勝負する。塔を一本立てる代わりに、曲げてつなげて輪にする。コールハースは著述家としても、摩天楼という形式を分析・批評してきた人です。CCTVはその批評を、批評対象そのものの規模で建てた建物だといえます。
空中で連結された2本の塔
構成はこうです。地上から2本の塔が、それぞれ内側に傾きながら立ち上がる。頂部で、L字形の巨大な棟が水平に張り出し、2本を空中で連結する。足元も低層部でつながっているため、全体としてねじれた四角い輪が完成します。
張り出し部の下には支えがありません。数万トンの躯体が頭上に浮かぶ。この不安定さの感覚こそ、この建物がもっとも強く発するメッセージです。
斜めの網目が力を運ぶ
輪のかたちは、通常の柱と梁では支えられません。CCTVでは、外皮に斜め格子(ダイアグリッド)の鉄骨を張りめぐらせ、建物の表面全体で力を運びます。力が集中する場所は網目が細かく、余裕のある場所は粗い。
つまり外観の模様は装飾ではなく、応力の分布図がそのまま立面になったものです。構造を隠さないという近代の原則が、コンピュータ解析の時代にどう進化したかを示す実例です。
放送局を一つの輪に収める
輪のかたちには、機能上の意図もあります。放送局の仕事は、制作、報道、管理、送出と、部門が鎖のようにつながる連続の流れです。塔を2本に分ければ部門は分断されます。
輪にすれば、すべての部門がひとつの連続した動線の上に乗る。かたちの奇抜さは、組織の図式の翻訳でもあるわけです。機能の各部を分けて橋でつなぐデッサウのバウハウス校舎の解法を、垂直都市の規模まで拡大したものと読むこともできます。
賛否が割れ続ける建物
CCTVは完成の前後から、激しい賛否にさらされてきました。北京市民からは形を揶揄する呼び名で呼ばれ、膨大な建設費や、国営放送の本部という性格への批判もあります。中国政府が後年、過度に奇抜な建築を抑制する方針を打ち出した際にも、しばしば引き合いに出されました。
一方で、構造技術の到達点として、また超高層の形式を更新した作品として、専門家の評価は高いものがあります。都市のアイコンか、権力の見世物か。この論争自体が、建築が社会に対して持つ力の証明でもあります。
摩天楼批評の系譜のなかで
超高層という形式を疑う試みには、系譜があります。コルビュジエは1920年代、塔を林立させるのではなく広い間隔と緑で都市を組み直すことを提案しました(300万人の現代都市)。コールハースは、その近代都市計画も含めて検証の対象にし、密集と混沌にこそ都市の生命があると論じてきた人です。
高くすることを疑ったコルビュジエと、高さの意味を疑ったコールハース。ユルバニスムとあわせて読むと、百年にわたる摩天楼論争の現在地としてCCTVが見えてきます。

