研究棟が二棟、向かい合っている
ソーク研究所(1959–65年/アメリカ・カリフォルニア州ラホヤ)は、ポリオワクチンを開発したジョナス・ソークの依頼で、ルイス・カーンが設計した生物学研究所です。
敷地は太平洋を望む崖の上。二棟の研究棟が中庭を挟んで向かい合い、両側の壁面には研究者の書斎が並んでいます。書斎はすべて少しずつ角度を振って海を向いています。
中庭に、木を植えなかった
設計の途中まで、中庭には庭園が計画されていました。しかし最終的にカーンが選んだのは何も置かないことでした。
いま中庭にあるのは、石張りの床と、中央を貫く幅わずか数十センチの水路だけです。水は静かに流れ、崖の先で落ちます。視線はそのまま太平洋の水平線へ抜けていきます。
植栽を排し、床と水路と空だけを残す。足すのではなく引くことで、場所の力を最大化した判断です。
ラ・トゥーレット修道院との比較
この研究所は、コルビュジエのラ・トゥーレット修道院(1953–60年)としばしば比較されます。
共通点は、個室が反復して並ぶ構成と、打放しコンクリートの素材感、そして中央に何も置かない外部空間を持つことです。修道院の中庭も、研究所の中庭も、装飾がなく、静けさが主題になっています。
研究者が個室にこもり、共有空間で議論する——その生活のかたちは、修道士のそれと構造的に似ています。建築の類型として、研究所と修道院が近いというのは、この2棟を並べたときに見えてくる視点です。
カーンがコルビュジエから強い影響を受けたことは広く指摘されています。ただしラ・トゥーレットを直接の参照元としたと断定できる資料は限られるため、比較として読むのが適切です。
配管の階を、まるごと確保した
この建物には、技術的にも重要な特徴があります。各研究室階の上に、配管とダクトのためだけの階が設けられている。人が入って作業できる高さがあります。
研究設備は数年で更新されます。そのたびに天井を壊すのではなく、専用の階で対応する。「仕える空間」と「仕えられる空間」を分けるというカーンの考え方が、最も明確に現れた部分です。
コルビュジエのユニテ・ダビタシオンでも、設備をどう通すかは断面の主要な課題でした。設備が建築の形を決めるという点で、両者は同じ問題に取り組んでいます。
断面図で見るとわかること
ソーク研究所の写真は、中庭と水平線ばかりが写ります。
しかし断面図を開くと、研究室階と設備階が交互に積層していることがわかります。書斎が海側に振れている角度も、平面図でこそ確認できる。詩的に見える空間が、きわめて即物的な要求から組み立てられていたことは、図面でしか読めません。
ラ・トゥーレットの側の断面を確かめたい方は、下記のロンシャンの手描き構想図とあわせてご覧ください。
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