外から見えているのは、梁の断面
香川県庁舎東館(1958年/香川県高松市)は、丹下健三が設計した庁舎建築です。
特徴は外観にあります。各階のバルコニーに、細い水平の梁が何本も並んで突き出しています。これは装飾ではなく、構造の小梁がそのまま外部に現れたものです。
コンクリートでありながら、その並びは日本の伝統的な木造建築の垂木や組物を思わせます。素材は近代のもの、構成の記憶は日本のもの——この二重性が、この建築が繰り返し論じられる理由です。
1階を、県民に開けた
1階はピロティとして開放され、ロビーと中庭が連続しています。庁舎でありながら、誰でも入れる場所を地上に用意したという点が当時としては新しい判断でした。
ピロティは、コルビュジエが「近代建築の五原則」の第一に挙げた要素です。その狙いは、建物が占有した地面を人に返すことにありました。丹下はこれを行政と市民の関係という主題に置き換えています。
同じ操作が、フランスの都市論から日本の庁舎建築へ移されたときに意味を変えた例です。
丹下健三とコルビュジエ
丹下健三は、学生時代に雑誌でコルビュジエのソヴィエト・パレス計画案を見て建築を志したと繰り返し語っています。直接の弟子ではありませんが、出発点にコルビュジエがいたことを本人が明言している数少ない建築家です。
香川県庁舎の翌年、1959年には国立西洋美術館が竣工しました。日本にコルビュジエ本人の建築が建った時期と、丹下が独自の解答を出した時期はほぼ重なっています。
丹下は1987年にプリツカー賞を受賞しました。
立面図で見ると構造がわかる
この建築の外観は、写真では細かい梁の重なりが潰れてしまいます。
立面図を見ると、小梁のピッチが正確に割り付けられていることがわかります。断面図では、その梁がバルコニーのスラブとどう接続しているかが読める。木造に見える表情が、実際には鉄筋コンクリートの構造計算から出てきた形だったことは、図面でしか確認できません。
コルビュジエの側の構造表現を確かめたい方は、下記のユニテ・ダビタシオンの手描き構想図が参考になります。
いまも現役
香川県庁舎東館は、2022年に国の重要文化財に指定されました。戦後建築としては早い時期の指定です。
耐震改修を経て、現在も庁舎として使われています。同じ丹下の代表作である広島平和記念資料館、国立代々木競技場とあわせて、戦後日本のモダニズムを代表する建築群を形づくっています。
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